脳神経内科医によるブログです。自己学習として読んだ論文や、論文中で出た英単語を記録しています。

アミロイドアンギオパチー(ちょっとだけ復習)|神経内科の論文学習

 頭痛,物忘れの精査として頭部MRIを撮った際に,時々,脳アミロイドアンギオパチーの所見を偶然認めることがあります.

 多くは無症状ですが,どんな疾患か確認のため文献を読んでみました.

 


Rapid Cognitive Decline and Recurrent Falls in a 71 Year-Old Man Due to Cerebral Amyloidangiopathy-Related Inflammation (CAA-RI).
 Geriatrics (Basel). 2019 Oct 2;4(4). pii: E56.
 doi: 10.3390/geriatrics4040056.



www.ncbi.nlm.nih.gov

 

 症例報告もありましたが,総説部分の要点のみ,まとめてみました.

 

 

 

脳アミロイドアンギオパチー cerebral amyloid angiopathy(CAA)

CAAの概要

 皮質や軟髄膜の血管壁にアミロイドβが沈着する.特に小動脈,小血管,毛細血管などに沈着するのが多い.

 沈着により,血管障害,微小動脈瘤形成,血管閉塞,フィブリノイド壊死などを惹起する.これらにより,頭蓋内出血(mico-macrohemmorhage) や脳表ヘモジデローシス,皮質下白質脳症などを生じる.

 通常は無症状だが,脳出血や, 出血/白質の虚血に伴う進行性認知機能低下などの原因となる.

CAAの疫学

  • 孤発性.
  • アルツハイマー型認知症と関連することがある
  • 年齢との関連が強く,高齢者で生じる.
    CAAは50歳以下でもまれに見られる.病理解剖では,60~69歳の30%,70~89歳の50%,90歳以上の70%にみられるとされる.
  • まれに家族歴がある.ApoEε4アレルがリスク因子となっていると考えられる.

 

CAA-RIの概要

 アミロイド沈着により血管壁内での炎症が生じ,それにより白質の浮腫が生じる.

 CAA-RIは,可逆的な可能性がある脳症で,急性~亜急性の認知機能低下を生じる.平均67歳で,性差はない.経過は,単相性や一次進行性の経過をたどる.

 CAA-RIはApoEε4アレルのホモ接合体と関連し,CAA-RIの70%でみられる(CAAがない一般人口の5%未満でみられる)

 

CAA-RIの臨床徴候

  • 進行性の認知症,人格変化,神経行動異常,巣症状(stroke-like signs),頭痛,痙攣などの,急性から亜急性の脳症を呈する.

CAA-RIの検査と診断

  • 画像検査:可逆性の白質脳症と,左右非対称性な散在性で融合性な白質T2高信号を呈する(感度82%,特異度97%)

  • 髄液:正常.細胞数増多 and/or 蛋白上昇(IgG上昇)を認めることがある.急性期には,Aβに対する抗体が検出されるが,寛解期には正常域に改善する.
  • 他疾患除外:中枢神経感染症,PML,ヘルペス脳炎,トキソプラズマ,クリプトコッカス,arthropod transmitted diseases,ウイルス性脳炎,自己免疫性脳炎,脳腫瘍(リンパ腫,meningeosis carcinomatosa)など.
  • 最近では,ChungとAurielらにより,診断基準が提唱され,CAA-RIの鑑別に役立つ. 
    f:id:yukimukae:20191114193937p:plain
    (文献を参照に作成)
  • 抗アミロイドβ抗体ApoEゲノタイプは有用であると考えられる〈本邦では保険未収載〉.いずれも,CAA-RI診断の重要な手がかりとなり得る(特に脳生検が侵襲的となる症例で).急性期には,髄液中の抗Aβ抗体が上昇しする.抗体は臨床的,画像的な寛解とともに,経時的に正常値まで戻る.

CAA-RIの治療

  • 標準的な治療は,プレドニゾロン 1 mg/kg による免疫療法で〈本邦では保険適用外〉,多くの症例で改善を示すが,少数例で症状が再燃する.
  • 難治例の他の治療としては,メトトレキサート,ミコフェノレートモフェチール,シクロホスファミド,免疫グロブリン,アザチオプリンなどである〈いずれも本邦では保険適用外〉
  • CAAでは頭蓋内出血のリスクが高いことから,抗凝固薬や抗血小板薬は避けるべきである.しかし,心房細動合併例では議論の余事がある.

感想

 CAAおよびCAA-RIについて,大まかな概要が理解できました.
 進行性認知症を見た場合に,CAA-RIも鑑別に挙げるよう心がけようと思います.

 機会があれば,CAA-RI診断基準の原著Validationもいずれ読んでみたいと思いました.

 


 

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