脳神経内科医によるブログです。自己学習として読んだ論文や、論文中で出た英単語を記録しています。

孤発性成人発症ネマリンミオパチーの臨床像~治療|神経内科の論文学習

Sporadic late-onset nemaline myopathy Clinical spectrum, survival, and treatment outcomes

 (Neurology)

Neurology® 2019;93:e298-e305.
DOI : https://doi.org/10.1212/WNL.0000000000007777

 

 Sporadic late-onset nemaline myopathy(SLONM) のretrospectiveな検討です.

 過去に,SLONMの可能性が指摘された症例を受け持ったことがあったため,今回読んでみました.

 初めてこの病名を知ったときは,"ネマリンミオパチーって成人発症するの!?"と驚きました.まだ不明な部分が多い疾患ですが,有効な治療法が確立してほしいですね.

(※SLONMに対して,現在のところ本邦で保険適応のある治療はありません)

 


 

28例のSLONM症例(17例(61%)でM蛋白(MP) 陽性,11例(39%)がMP陰性)

発症年齢 62歳(中央値).

診断までの期間は35ヶ月(中央値).

症状

初発症状:両側性近位筋優位の筋力低下 が43%と最多.次いで体幹部筋力低下が39%.球症状が18%.

36%で筋力低下前に重度の頚部痛や背部痛を生じる.

50%で比較的急速な進行を呈する.

Fasciculationは見られなかった.

検査所見

NCS/EMG施行(21例):全例でearly recruitmentやshort durationを認める.

48%でlong duration MUPの混在,82%でfibrillation potentials,19%でFasciculation potentialを認めた. 

93%でCK正常.

MP陽性・陰性の症例で臨床上/検査上の差は認めなかった.

治療

9例でIVIgを施行し,うち7例(78%)で効果あり.

8例で血液学的治療(自己造血幹細胞移植ASCT or 化学療法)を施行し,6例(78%)で効果あり.

8例で免疫抑制治療(ステロイド,ミコフェノール,アザチオプリン,シクロホスファミド,血漿交換)を受けて,うち1例(13%)で効果があった.
3例で治療反応性が大きく,すべてIVIg施行例(2例がMP陽性,1例がMP陰性).

予後

5年生存率は92%.10年生存率は68%.MP陽性陰性で差はなかった.