脳神経内科医によるブログです。自己学習として読んだ論文や、論文中で出た英単語を記録しています。

Balint症候群を生じたPosterior Cortical Atrophy|神経内科の論文学習

最終更新 2021年3月26日

 

 Balint症候群は一度経験すると忘れない,非常に特徴的な症候と思います.

 NeurologyのTeaching Video NeuroImagesに症例の動画が載っており,参考になったので共有致します.やはり神経症候は動画で見ると記憶に残りやすいですね.

 

 

Teaching Video NeuroImages: Posterior Cortical Atrophy Presenting With Balint Syndrome

Neurology. 2021 Mar 2;96(9):e1389-e1390.
PMID: 32928969
doi: 10.1212/WNL.0000000000010849.

n.neurology.org

 

症例:68歳 女性

18ヶ月前から視空間認知障害が始まった.徐々に進行し,ADLが低下した.

診察では,ataxia optique,視運動性失行,同時失認を認めた.視力は正常.Balint症候群の状態であった.

MRIでは両側頭頂後頭部の皮質萎縮を認めた.PETでは同日の代謝低下を認めた.

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画像では,両側の頭頂-後頭皮質と側頭皮質で萎縮があり,側脳室後角が拡大.FDG-PETでは後頭皮質で代謝低下.一次視覚皮質は代謝低下なし.

 

posterior cortical atrophy(PCA)と診断.

 

PCAの原因としては,アルツハイマー病,他の神経変性疾患(皮質基底核変性症),PRES,分水嶺梗塞などがある.

 

動画では下記が見られるようでした

 (論文のサイト内に動画があり閲覧可能です.是非ご覧ください)

  • 中心視野で物を見ることはできる(指を数える,物を掴む)が,周辺視野の物体を掴むことができない(ataxia optique).
  • 意識的に眼球運動を開始することができないため(眼球運動失行),指標を追視することができず,首を動かして見ようとする(前庭眼反射で代償).
  • 絵を見ても一つの物にしか注意が行かない(同時失認)
  • 眼鏡の装着が困難(動画ではDysptaxiaと記載.失行の一種なのだろうか…)
  • PET:頭頂後頭部で代謝低下.

追加文献

2019年のPCAに関するレビューがありました.

非常に濃い内容です.時間がある時に少しずつ読みたいと思いました.

www.ncbi.nlm.nih.gov