脳神経内科医によるブログです。自己学習として読んだ論文や、論文中で出た英単語を記録しています。

間欠性跛行に対するABI検査の精度|神経内科の論文学習

 

まもなく8月も終わろうとしています.

暑さも山を越しましたが,それでもまだまだ暑いですね.医局のクーラーの効きがいまいちのため,脱水には注意しています…

 

さて今回はJAMA Diagnostic Test Interpretation(診断検査の解釈)を読みました.

内容は循環器内科領域なのですが,症状的に神経内科にも受診しうると思います.下肢しびれなどの際に末梢動脈疾患を疑ってABI(ankle-brachial pressure index.足関節上腕血圧比)を行うことは時々ありますが,ABIの検査精度についてはあまり知りませんでした.その点で勉強になった論文です.

 

 

 症例提示

症例:61歳女性
既往歴:高血圧.
労作時の左ふくらはぎの違和感.
6ヶ月前から,階段をのぼる際に左ふくらはぎに鈍痛を感じ始めた.階段を2階分を上がると,15秒休む必要があった.安静時には痛みが無かった.
症状は増悪し,仕事に支障をきたすようになった.
身体所見:心拍数 82回/分,血圧 140/89 mmHg.下肢は暖かい.
鼠径,膝窩,足背,後脛骨部での拍動は両側とも良好.脊椎疾患の既往ない.下肢血管雑音はなく,外傷や感覚障害,浮腫もない.
運動負荷ABI(トレッドミル)の結果は下記の通り.

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ABI検査
次に何を行うか?
 A. 末梢動脈疾患と診断し,治療を開始する.
 B. 下肢血管撮影を行う.
 C. 下肢動脈エコーを行う.
 D. 非血管性の痛みであると伝える.
 
 
答え A. 末梢動脈疾患と診断し,治療を開始する.
 
Clinical Bottom Line
・症候性末梢動脈疾患の約19-31%はABIで境界(0.91-0.99)あるいは正常(1.99-1.40)の結果である.
・運動負荷ABI検査(トレッドミル)はPAD検出感度を向上させる.
・運動負荷後のABIで20%以上の低下,あるいは,足首の血圧が30mmHg以上低下する場合,PADと診断しうる.

 

読んだ感想

恥ずかしながら負荷ABIについて,今回始めて知りました.本症例では,初めから運動負荷ABIも提示されていたため,正答は容易でしょうが,もし安静時ABIのみが提示されていたら,Dを選んでしまうかもしれません.安静時ABIのみで末梢動脈疾患を除外しないよう,気をつけないといけないと感じました.

自分の施設で運動負荷ABIは施行しているのか? 一度確認してみようと思います.

 

 


 

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