脳神経内科医によるブログです。自己学習として読んだ論文や、論文中で出た英単語を記録しています。

シスタチンCでParkinson病のジスキネジアを予測する|神経内科の論文学習

Measurement of serum cystatin C: A valuable tool for evaluating dyskinesia in Parkinson’s disease

 (Neuroscience Letters)

Neurosci Lett. 2019 Jul 13;705:172-176.
DOI:https://doi.org/10.1016/j.neulet.2019.05.002.

 

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

パーキンソン病(PD)でのジスキネジア予測因子としての血清シスタチンC(CysC).

 

 

※シスタチンCはパーキンソン病の検査としては保険収載されていないことに注意を.

 

 

 

Method

対象症例

2015年10月から,2018年5月までShengjing Hospital of China Medical Universityの神経科に受診した症例を対象とした.

Inclusion criteria

 1)PDの診断を受けた症例(Chinese Medical Association Neurology Branch's dyskinesia and Parkinson's disease groupの基準を用いて診断)

Exclusion criteria

 1)二次性パーキンソン症候群.
 2)無治療のPD.

Clinical Assessment

 6:00~7:00の空腹時採血で検査.

 

Results

PD群 120例,Control群 156例.

PD群 vs Control群での比較

年齢,性別:両群で差無し.

PD群で血清CysC,Cr,BUNが有意に高い.

PD群で血清コレステロール値が有意に低い.

 

PD群での検討

PD群のうち,32/120例でジスキネジア(+),88/120例でジスキネジア(-).

PD群のうち,ジスキネジア(+) vs ジスキネジア(-)  での比較

 年齢,男性の割合,血清CysC,血清ホモシステイン,UPDRSⅡ,UPDRSⅢは,有意にジスキネジア(+)で高い.

 高血圧既往,糖尿病既往は有意にジスキネジア(-)で多い.

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ジスキネジアのリスク因子 (多変量ロジスティック回帰分析)

 血清CysC (OR 12.93, 95% CI 1.08–54.23, p=0.043)

 PD罹病期間 (OR 1.03, 95% CI 1.01–1.05, p=0.001)

 UPDRS II (OR 1.07, 95% CI 1.01–1.14, p=0.019)

PD群からジスキネジア合併を識別するための,CysCのROC解析

 AUC 0.735 (95% CI 0.644 – 0.827, p < 0.001)

 cut-off値を 1.13 mg/L とすると,ジスキネジア合併識別の感度 75.0%,特異度 71.6%

 

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Discussion

CysCはPD患者でのジスキネジアと,独立して強く関連した.

ROC解析の結果から,CysCがPD患者でのジスキネジアのスクリーニング検査として有用である可能性が示唆される.

 


読んでみた感想

 検査一つでスクリーニングができるというのは非常に面白いと感じた.もちろん丁寧な問診が最も重要であることは間違いないのであろうが,一つのバイオマーカーとなる可能性はあることは有意義と思う.

 しかし,Exclusion criteriaをみる限りでは腎疾患患者は除外されていないのか.その点は少し疑問が残るところではある.

 

 

 そういえば,別文献になるが,以前血清尿酸/クレアチニン比がPDの進行と相関するという報告を以前読んだことがあったな.↓

www.ncbi.nlm.nih.gov